こんにちは!
最近、吉田修一氏の作品を集中砲火のように読み漁っている『パーク・ライフ』→『パレード』→『横道世之介』と来た。青春小説ものが好きなので『横道世之介』は期待大だ。
一方、過去の2作は結末が唐突な感じがしており、若干、警戒しながら読み始めた。筆者とは同年代だ。この物語は、私の出身校と似たような東京の私立大が舞台で、同じ多摩地区に住み、時代はバブル期と、まさに私の青春ど真ん中と共通点が多い。
バブルがGo!の『横道世之介』by 吉田修一
概要
2009年出版。毎日新聞の連載小説。2013年に映画化。文庫本で467ページの長編。舞台は1987年のバブル期、東京の大学生活の1年目を中心に、16年後から現在(2008年)における登場人物たちをエピローグ的に触れる。
あらすじ
一人の学生を中心とした日常生活の物語だ。あらすじにまとめるのは難しいがトライする。
時代はバブル期(1987年)。東京の私立大学に入学する地方出身の横道世之介が主人公。世之介はごく普通の学生。持ち前の人の良さから、多くはないが親しい友人を作る。
友人には同じサンバサークルに入る倉持と唯、人間違えで声を掛け友人となっと加藤、お嬢様で世之介と交際する祥子、世之介が憧れた謎の美人千春などだ。
世之介の学生生活は当時の学生そのもの。授業はそこそこで、バイトに明け暮れる。ホテルのルームサービスと言う時給の良いバイトにありつき、サークル仲間、バイト、祥子と青春(ただの日常)を謳歌する。
物語の所々に、その後の世界が描かれる。デキ婚で学校を退学する倉持と唯も、パートナーを見つけるゲイの加藤も、ふと世之介を思い出し、懐かしく思う。ラジオのパーソナリティなどの活動をする京子は世之介の名前は忘れるが、強く印象に残っている。
そして、祥子、世之介の母と続いていく
感想
まるで映画「バブルでGo!」そのもののようなエピソードやグッズのオンパレードだ。テレカ、雑誌「ポパイ」「ブルータス」「コンパ」「ダンパ」「海水浴」(当時、海水浴がやけに人気だった記憶)、「フォルクス」(ステーキ・ファミレス)、「ねるとん」、「ボートピープル」
ところどころで挿入されるエピローグ的なシーンで、倉持夫婦、加藤が出てくる。世之介が出てこない段階で結末は予測できた。
普通の学生の普通の日常生活を、筆者が楽しみながら書いており、読者も楽しんで読める。ただ、前半は少しくどいと言うか、長い印象がある。
結局、田舎から東京に出てきた世之介は何を成し遂げたのか?
世之介は、ごく普通の学生の印象だが、映画化では、破天荒な感じに描かれるのだろう。ありふれた普通の人間でも、多くはないが関わった仲間達の人生に多少の違いを与えた。特別な人間である必要はなく、誰でも人生の主人公になれると言うことが、メッセージのひとつと思う。
嬉しかったのは、箱入り娘のような世間知らずのお嬢様の祥子が大きく変わったこと。世之介と遭遇したベトナムからのボートピープルの事件が、この物語でのクライマックスだ。彼女がたくましく?成長したことが嬉しい。
結末は母親の手紙で締めくくられる。心配していた唐突な結末ではなく、世之介が周りの人に多くの幸せを与えたことが分かる。
私自身にも世之介は影響を与えた。ご近所の写真家から古いライカを頂き、後にカメラマンとなる。私自身も、ブログ用に映える写真が撮れる技術を身につけたくなった。
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