『ビタミンF』重松清7つの短編集

Vitamin F

こんにちは!

重松清さんの代表作のひとつ『ビタミンF』を読んだ。中年の男性を中心としたその家族との7つの短編集。最近、慌ただしくて、読書のペースが落ちているのか、それとも、もうひとつ、この本に入り込めなくて、読むペースがあがらないのか、どういう訳か、読み終わるのに2週間くらい掛かった。一番最後の短編が重松さんらしい。また『とんび』にも通じる、家族とは何か、深く問いかける佳作と思う。

『ビタミンF』重松清7つの短編集

概要

どの短編でも、どちらかと言うと、冴えない、目立たない、若い頃、モテなかった中年男性が主人公。難しい年頃の子供を抱え、子育てや夫婦、年老いた両親など、日常生活での現実の問題に直面する中、家族との、ささやかな一歩前進をするようなストーリー集

感想

読了以来、一週間経過。読後メモなし。7編の内、今でも、記憶や印象に残っているのはこの2作品。記憶喪失しやすい私としては珍しい。

1つは、学生時代、当時の彼女と訪れたホテルに今の家族で再訪。夫婦仲がうまく行ってないことから、元彼女との再会を期待。モテない男の嫉妬深さは、読んでていて恥ずかしくなるが、理解もできる。夫婦仲が悪い中、最悪の状態から、元カノのタイムカプセル的な古い手紙が、一瞬、夫婦仲を和ませる(?)ような話

最後の部分の解釈が正確か不明だが、男の方が、一般的に、過去の相手といつでもよりを戻せると思いがちな部分の滑稽さと惨めさがよく表れている。

もう1つは、重松清の真骨頂の田舎に置いてきた両親、家族を思う気持ちと、前を向くには出て行かないといけない。その葛藤が根本にありながら、年老いた両親を思う気持ちを描いた作品。

本人が結婚した時に、父親を置いて出ていき、別の男と一緒になった母、年老いて、一人になった母に戻ってこないかと呼びかける父。その考えを受け入れられるか、られないかの家族の葛藤。

2つ目が一番最後の短編。家族は離れて暮らしたら、もう家族ではないのかもしれない。気持ちが通じ合っていたり、いつも忘れないでいても、離れたら、もう一緒に住んでいたときとは同じではない。でも、それぞれの人生を歩むには前に進まないと行けない。出ていくことが悪いわけではなく、そういう場面場面が誰にでもあるから、著者は、他の作品でも、この別れの部分をテーマにされているのだと思う。

今後の読書予定

今回、本を読むのが辛かったのは、今、現実的な家族の問題には触れたくなかったからだ。正直、今の自分にとっては、楽しめるテーマではなかったので、読むペースが上がらなかった。それでも、最後の作品などは、いまだに状況が目に浮かぶくらい印象深い作品だったので読んでよかった。

そう言いながら、もう少し、気楽に本を読みたい、そう思って読んだのが『まほろ駅前多田便利軒』だ。あっと言う間に読んでしまったので、次に何を読むのか悩んでいる。

vitamin f

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