読了報告『盤上の向日葵』は将棋を指したくなる

(2分くらいで読めます)

こんにちは!

久しぶりの読了報告と言う名の読書感想文をお届けします。将棋棋士の世界を描いた長編ミステリー『盤上の向日葵柚月裕子著。

問題は読了日が、一ヶ月以上前の10/25(日)。いつもなら、読み終わった途端に内容など忘れてしまう。どこまで覚えているか?

この本は、印象深い作品なので、おそらく感想くらいなら、今でも十分かけそうなので、レッツ・トライ!

この本を買った理由は、本の帯の「2018年本屋大賞2位」「しばらく立てないくらい素晴らしかった」(くまざわ書店店員)が決め手だ。柚月裕子さんの本は初めて読むが、同年代のミステリー作家だそうだ。

感想の前のあらすじ

過酷な境遇を持つ少年は将棋の才能がある。教員を引退した男にその才能を見出され、プロの将棋棋士をめざすが、父の賛同を得られない。学生になり、賭け将棋の世界に魅了される。伝説の真剣師に出会い、真剣勝負の世界を知り、人生が大きく変わる。

死体遺棄の事件を捜査する若い刑事もプロ将棋棋士をめざしていた。ベテラン刑事とのコンビで事件の真相に近づく。将棋に翻弄される天才少年の人生は、どこに向かう?!

ネタバレ無しの感想

上下巻の長編ミステリーだけに、ネタバレ無しで感想を書くのは難しい。将棋の天才少年だった主人公が、どのように人生を切り拓き、将棋の世界と絡んでいくか。少年の不幸な生い立ちから、少しでもまっとうな世界での成功を祈りながら読んでしまうが、そうは行かないのが小説の世界。

平行する形で進展する刑事の捜査からも目が離せなくなる。キーとなるのは希少価値ある将棋の駒。

この物語で頻繁に出てくるのは将棋のシーンだ。まるで将棋の実況中継のように、指し手の描写が詳しく描かれる。私は、将棋は出来るが、きちんと学んだことはないので、将棋の描写シーンは斜め読みをした。

それでも、数々の真剣勝負に命懸けで臨む棋士達の気迫を目の当たりにする。読了後、きちんと将棋を勉強したくなる。将棋に興味がある人には最高のミステリーに違いない。

ネタバレ有りの感想

将棋の勝負の世界と絡めたミステリーだが、この物語は、他にもいくつかの論点がある。ひとつは、血の繋がり。どんなに父から虐待を受けていても、また、その生活から救うべく手を差し伸べる支援者がいても、少年は父の元から去ることが出来ない。ビジネスと将棋の世界で成功した後、金の無心を繰り返す父に対し、最終的に決別の決め手になったのは、血の繋がりがなかったことだった。

もうひとつは「死神にとりつかれた人間」は救えないということ。少年の母親の家系は、天才が多い家系である一方、自殺者が多い。少年の母親も自殺。少年も天才であるが、物心ついてから、死への恐怖と同時に、憧れのような感情も持ちながら成長する。まるで何か、死へのきっかけのようなものを常に待っているかのような人生。

刑事に追い詰められた時に迷わず死を選択。刑事に見つけられなくても、もしくは、この事件を犯さなくても、遅かれ早かれ、生き続ける選択は残っていなかったように思えた。

幼少期の不幸から、読者としては、人生の成功を祈ってしまうが、成長するにつれ、絶望にしか向かっていないことにやるせなさを感じる。一方で「死神にとりつかれた人間」の結末は変わらないということにも思い知らされる。

成功まで手が届きそうになりながら、破綻する鬱屈とした雰囲気の物語だ。上巻の途中から、結末が知りたくて、読むのを止められなくなる、インパクトあるミステリー。

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