こんにちは!ひろさんかくです。
久々に、映画館で映画を見る。たまたま、ピーター・バラカンさんのラジオ番組で紹介あり、この作品を知る。バラカンさんの推薦で映画を見るのは、年初に、1960年代のイギリスの文化を描いたドキュメンタリー「マイ・レボリューション」を見て以来となる。
「マイ・レボリューション」は、イギリスが、かつては若者文化の中心だったと、年配の方々(当時の若者)が、ただただ懐古してるだけの印象だった。正直、やや退屈だったので、今回は、本当に大丈夫かなと少し心配しつつ映画館に向かう。
映画館は先日の記事の通り「ジャック アンド ベティ」でテンションあがる。さて、映画はいかに?!
感じ方はいろいろ「Sorry We Missed You(家族を想うとき)」
概要
この「Sorry We Missed You(家族を想うとき)」の監督ケン・ローチの前作「I, Daniel Blake (わたしは、ダニエル・ブレイク)」(2016年)は、貧困の中、他人同士ながら助け合っていく、人と人との絆のようなものを描いた映画(と記憶している)
今回の作品も、前作同様に、社会的な問題を監督の目線から描いたもの。
ネタバレ含むあらすじ
映画のあらすじを大胆に要約して書くのが毎回、楽しい。レッツ・トライ!
「イギリス北部の中核都市であるニューカッスルに住む普通な4人家族の物語。
家族のためにマイホームを持ちたい父は、いちかばちか、某運送業者と契約し、個人事業者として運送業を始める。トラックを借金して買うために、説得して、妻が介護の仕事で使う車も下取りに出す。
運送の仕事はきつい。週1日休み、毎日14時間労働。トイレも食事も行く時間が十分取れない。介護士をしている奥さんも同じで、人を相手にしていることもあり、冷たいことは出来ず、車もなく、負担が増して行く。夫婦はいつも疲れていて、家で一緒にいる時間も短く、家族の団欒も無くなっていく。
反抗期の高校生の息子は、学校にも行かず、トラブルも起こし手が焼ける。小学生の娘は家庭の不安定が影響し不眠になったり心配な様子。
それでも、家族のためと言う思いで仕事に邁進する父。家庭のトラブルまでは手が回らない。万引きで捕まった息子の対応で仕事に穴を開け、会社に罰金を払うことになり、頭に来た父は息子の携帯を取り上げる。逆上した息子は家を滅茶苦茶にして出て行く。
商売道具の父のトラックの鍵がなく、息子を疑い殴りつけるが、昔の生活に戻りたい娘が鍵を隠していた。娘はトラックが来てからすべてが狂ったと思っている。
不幸は重なり、配送中に強盗に襲われ、会社の設備が破壊され、父も大怪我を負う。病院の待合室に運送業者から電話。仕事の穴を空けた叱責と罰金、会社の設備破損の高額な弁償も求められる。優しかった妻も切れてしまい、運送業者の上司に噛み付いて、泣き出してしまう。それでも、旦那は怪我で欠勤が続き、罰金など借金が膨れ上がりそう。
父の怪我を聞いて駆けつけた息子。心から心配している。翌朝、仕事ができる状態ではないが、仕事に向かおうとする父に気付き、止めようとする息子。妻も身体を張って静止しようとするが振り切って車を出す父。
こんな状態で、一体、彼は、どこに向かうのか。
感想
監督が描きたかったのは、以下のようなことなのかもしれない。
高度に発展した資本主義社会での企業間のまるで戦争のような競争激化、人の流れに加え、経済、世の中がグローバル化、スマホ、インターネットによる新たなサービス市場の進化、経済そのもののデジタル化、などなど大きな変革が突き進んでいる背景が大前提にある。
その中、企業は魅力あるサービスを競って提供し、消費者も、より魅力的なサービスや価格を要求している。その行き着く果てには何があるのか?
かつて、本の注文購入など、数週間待たなければならなかったのが、アマゾンで即日に手に入ることも可能になった。その裏側で、その輸送サービスを成立するために負担を強いられる末端の労働者もいる。今回の映画の主人公のように。
- 政治が悪いのか?
- 利潤だけを追求する企業が悪いのか?
- サービスに対し貪欲さを失わない消費者が悪いのか?
- 助け合わない地域社会が悪いのか?
原因は一つではなく、解決策も特効薬もひとつではなく、事態を改善するのは容易ではない。でも、この映画を見て、何かを感じた人は少しでも良いから、解決に向けた気持ちや意識を持って欲しいと言うことがメッセージなのだろうか?
見た人それぞれ、受け止め方が異なり、違う意見や考えを持つだろう。「考えて欲しい」が監督の狙いではないかと思う。
自分ならどうする?
家族のためにリスクを取った主人公は立派だが、リスクを取るなりの調査や準備をもっとすべきだったのかもしれない。
横から見ているから、客観的に、冷静に意見が言えるだけで、当事者では、そこまで余裕がないのも事実だ。
独り言
現代において、この主人公のように、大企業(例えばアマ◯ンのような)のバリューチェーンの末端(個人の運送業者)になることは、搾取されるリスクがあると言うことを認識する必要があるのかも知れない。
正社員として認めてもらえない◯ーバーなどのライドシェアの運転手や、過酷な営業条件を盾に厳しい労働環境を強いるような日本のコンビニ業界のフランチャイズ店とか、優れたサービスを提供する裏側の世界にも、もっと目を向けるべきなのかもしれない。
もちろん、企業側の目線で考えれば、フランチャイズや個人事業者としての契約で成功している人もいるだろうから、必ずしも、意図して搾取していることにはならないと思う。また、新たな雇用機会やサービスも生まれ、地域社会に役にも立っていると思う。
「この搾取の構図になりかねない部分を、誰が監視するのか」と言う点が重要なのかもしれない。政治だけでは無理で、巨大資本を抱える大企業をその気にさせる必要があると思う。その一環が、国連によるSDGs活動なのかもしれない。大企業のオーナーである投資家もESG投資など、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を意識した企業に、もう一段階、投資の配分を優先すべきかもしれない。
(注)SDGs: Sustainable Development Goals(世界の国や地域が協力して持続可能な開発を目指す国連による人権、貧困、環境など世界で抱える課題へのイニシアチブ。企業にも広く協力を求めている)
独り言追加
ハリウッド映画では、この手の映画でも悲壮感は漂っても、最後はハッピーエンドになることが多いのかもしれない。「幸せのちから」でのウィル・スミスなんて鉄人か超人のような働きで幸運を掴む。この映画を見終わった後、格差、貧困とかについては何も考えなかった。映画でも描かれてはいなかったし、そもそもテーマですらない。
映画とはどうあるべきかについて考えてしまう。ハリウッド映画っぽければ、元気はもらえるかもしれないけれど、現実の世界では、なかなか、起こりえないことばかり。今回のイギリス映画の方が、より現実に近いかもしれない。ただ、観客は映画館の中でも、現実を突きつけられたい訳ではない。現実逃避したり、ありえない成功を夢見たり、楽しみたいだけかもしれない。なので、何が優れた映画かは分からない。



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