こんにちは!
吉田修一氏の芥川受賞作『パーク・ライフ』を読んだ時、その直前に発表された『パレード』の方が芥川賞にふさわしいなどの口コミを複数見た。
『パーク・ライフ』を読んで1週間くらい経つ。いまだに、登場人物の印象がしっかり記憶に残っている。普通の登場人物だ。キャラが立っているというわけでもない。まるで、目の前にいるかのようなその思考や行動が描かれているからかもしれない。
次に小説を読むなら『パレード』と決めていた。短編と言ってよい長さの「パーク・ライフ」と比べると『パレード』は普通の小説と言ってよい長さだ。300ページ弱。
一回読み、もう一度、読まないといけないと思いつつ、最初の登場人物の章だけ、再度、斜め読みした。この状態でどこまで理解できているか分からないが、自分なりの理解でレビューを書いてみたい。
『パレード』by 吉田修一は楽しんで読めるが
概要
吉田修一氏の初の全般書き下ろしの小説。2002年発表。第15回山本周五郎賞受賞。2010年に「パレード」として映画化
あらすじ
5人の若者が千歳烏山のマンションに暮らしている。物語はそれぞれの登場人物の視点で語られる。
- 田舎から出てきた大学生の杉本良介は、この中ではもっとも精神年齢的に幼いかもしれない。人畜無害。あまちゃん。ナイーブ
- 俳優と付き合っていることになっている大河内琴美は、現状を理解している。仕事はしておらず、俳優からの連絡だけを待っている日々。それ以外の時間帯は同居人達と時間を潰している
- 相馬未来はイラストレーターであり雑貨屋の店長も任せられている。どうしようもなく飲む。だらしなく飲む。まわりを巻き込んで飲むタイプ。性格はきつい方。男っ気はない
- 小窪サトルは最年少。未成年。法律的にはかなりリスキーな稼業や生活で過ごしている。最年少で可愛がられるが、一番、冷静に、かつ、冷めて同居人たちのことを見ている。彼だけでも小説が成り立つくらい謎の多い人物
- 伊原直輝は年長で小さい映画配給会社で働いている。他の同居人と比べるとやりたかった仕事・世界で忙しく働いている。常識人に見える。皆から頼られている。未来とは飲み仲間でもある
あらすじを書くとネタバレになるので危険だ。いずれにしても、物語は、良介→琴美→未来→サトル→直輝の順番で進む。年齢、性別は違うが、この5人の共同生活、グループの中にいることが、それぞれの満たされない思い、もしくは、問題や不安や不満を忘れ、楽しい時間を過ごせている。
このグループにいることに依存している。このグループに依存していることが、ある事件そのものまでも許容してしまうような異様な世界を明るく描いている。
感想
最後のシーンまでは、このグループの楽しそうな生活に憧れもした。最後の事件の意味するところが分からない。ネタバレは避けるが、事件を犯すには動機や目的があるはずだが、その描写は明確には描かれていない。
だからか、唐突感があり、頭がついていけない。冒頭書いたが、吉田修一氏の描く登場人物はまるで生きているようにリアリティがある。軽く明るい調子の文体は、読みやすく、結論や結末を知りたくて読み進めてしまう。
『パーク・ライフ』も同じだったが、この後どうなるのだろうと言う好奇心で読ませる。が、ある時点でスパッと切られてしまう。この物語も同じだ。それぞれが、この共同生活に依存しながら、家主以外は、この共同生活後も見据え始めている。
犯罪者の心情を理解はしたくないが、そこのヒントが欲しいと思ってしまう物語だ。そこを考えさせるのが筆者の意図ならすっかりその罠に嵌ってしまっている。
『パーク・ライフ』を読んで『パレード』の方が面白いと聞いて読んだが、同じく、映画「パレード」の方が小説より面白いという口コミもある。思わず、DVDを借りてきてしまった。次回、お楽しみに。
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