今年いち『キッチン』吉本ばなな

こんにちは!ひろさんかくです。

それほどたくさん小説を読んでいるわけではないが、今年読んだ中で、今のところ、一番良かったのが吉本ばななの『キッチン』かもしれない。30年前のバブル景気前半の頃(1987年)に出版されたのに、なぜ、いままで読まなかったのだろう。

『キッチン』『TUGUMI』が大ベストセラーになり、ばなな現象と呼ばれ、1989年の年間ベストセラーランキング10を独占するかの勢い、映画化も続々という状況下なので、ひねくれた性格の私は、あえて飛びつくのを避けたのかもしれない。

実際には、当時、『ノルウエイの森』で村上春樹にはまり、男性作家ばかり読んでいたのが理由かもしれない。いずれにしても、視野が狭く、あさはかな考えを、今、深く反省している。あの頃、この本に出会っていたら、もう少し、その後の人生が楽だったかもしれない。もしくは、今、読んだからこそ、ここまで感じたのかもしれない。

今年いち『キッチン』吉本ばなな

概要

肉親を失い、悲しみにくれる若い二人。最愛の人と永遠に一緒にはいられない。どのように素晴らしいこともいつかは終わる。どんなに辛いことも悲しい気持ちもいつかは消える。そういうことを認識して、今を一生懸命に生きようとする若者のものがたり。

感想

この人の文章をどう表現してよいのか分からない。一応、挑戦する。「冬の寒い日の朝、森林の奥で深呼吸した時の、喉や肺から身体全体に染み渡る、冷んやりと気持ちよく新鮮であり、神聖な酸素のような感じがする」。美しいというのが適切なのか分からないが、「冷たい水の流れに手を入れたときのような感じの気持ちの良い文章」だ。

慣れないことを書いたので汗が出る。

『キッチン』では、主人公の最後の肉親であるおばあちゃんとの別れ、その後、身寄り無く、お世話になる男友達の母親との別れがある。最愛の人との別れによるお涙頂戴のストーリーではなく、その別れをきっかけに、人はどう反応し、対処し、成長していくか、感情の揺れ動きと合わせ描かれている。

つまらない、お涙頂戴ものではなく、どのようにこのつらい状況から一歩踏み出そうともがいている様が、決して熱くならず、淡々と書かれているのが心地よい。何度でも読み返したくなってしまう。

事実、読み終わった後、即、二回目を読んだ。

映画化

早速、映画も見たくなり調べた。『キッチン』としては、1989年版が有名なようだが、日本と香港合作の1997年版もあるようだ。映画も見たいが、『TSUGUMI』『哀しい予感』『白河夜船』など他の作品をまずは読んでみたい。

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