こんにちは!
久しぶりに、結末が知りたくて知りたくて、夢中になって読み続けてしまう小説に出会った。『未来』by 湊かなえだ。日曜日に3時間くらい夢中になって読み続け、月曜も続きが気になり、仕事が手につかなくなる。在宅勤務で誰も見ていないことを良いことに、お昼休みと定時後に481ページを一気読みした。
湊かなえさんのデビュー作『告白』は、小説よりも、映画での松たか子演じる主人公の怖い演技で有名かもしれない。今回の『未来』は読後感は爽快にはならない。『告白』も爽快ではないけれど悪い奴は痛みつけられたので妙に満足した記憶がある。
この小説は読み始めて、すぐ、不幸な少女が最後には救われることを期待してしまう。主人公の少女以外に、この物語に関係する主要人物のエピソードから、徐々に物語、そして、底知れない不幸の全容が明らかになっていく過程が面白い。陰惨で悲劇の連続のような話なので「面白い」と言う言葉は適切ではないかもしれない。それでも、夢中になってむさぼり読んでしまうのは、ストーリーそのものが面白いからほかならない。
能天気な私は、最後に救われるだろうと、その「ホッとする」瞬間を求めて読み進める。結果、期待を裏切られることになるが、自分の期待と違うからと言って、クチコミとかに、ダメ出しするほど、つまらない作品ではない。注意事項は、元気で読書に飢えているような人におすすめなのかもしれない。実際、口コミサイトでは辛辣な酷評も目につく。
あらすじ
ネタバレしない範囲、かつ、このあらすじを読んで、読んでみたいと思ってもらえるようなあらすじに挑戦!
「田舎で両親と3人暮しの少女は、父を早くに病気で亡くし、精神的に不安定な母親との二人暮らしになる。不安定な少女が前を向けていたのは、未来の自分から届いた言う奇妙な手紙とその送り主である30歳になった自分への存在に対してだ。未来の自分へ届くはずのない手紙を書き続ける。
そんな頼れる人が少ない中、母親が悪い男に搾取され、学校も家庭も居場所がなくなる。似たような不幸な世界に住む同級生や先輩と見えない細い絆で繋がる。主人公と同級生を励ました先生も、貧困と両親不在の家庭環境など、ギリギリの世界から幸せになろうと必死でもがいて生きている。だからこそ、彼女等に見えない形で救いの手を差し出す。
最後に出てくる主人公の父親と母が出会うエピソードで、母の不安定な理由が分かる。貧困、ネグレクト、虐待、DVなど救えない陰惨な家庭環境の犠牲者となる子供達が救われる日は来るのか?」
感想
複数のエピソードを読むことで、読者だけは、主人公も知らない物語の全容を知ることができる。この全容や結末を知りたい好奇心が、夢中になって読ませる原動力になる。決して、楽しいテーマではない。大人だったら、”なんてことはない”ような話や、少し誰かに相談することができたら、簡単に救われるようなことが多い。
それでも、当事者はその狭い世界しかなく、そこから抜け出すには、そんな馬鹿な!としか思えない解決策しか見つからないのだと思う。
筆者のあとがきでは「貧困問題」の存在や実態を知ることの必要性を訴えている。知ることができたら、想像力を持つことができたら、救いようのない者も救われる可能性がある。と言うメッセージが込められていると認識した。
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