リアルな会話『fishy』by 金原ひとみ

(2分で読める)

こんにちは!

毎年、恒例の「本の雑誌」が選ぶ今年のベスト10から、何冊か選び、年末年始、貪り読む。数日前、2020年の第一弾で『パリの砂漠、東京の蜃気楼』by 金原ひとみのエッセーを読んだ。「本の雑誌」2020年度ベスト10についは、先日、お届けした(こちら参照)。

その選考の中で、金原ひとみの小説『fishy』も推す声が多かった。最初に、エッセーを読んで見て、破滅的な生活スレスレの中から作品を生み出している筆者に興味を持つ。

このベスト10を起点に、思いがけず脱線していくのが楽しい。2年前はアマゾンの原住民ヤノマミの話にハマり、その著者(TVディレクター)の講演会にまで行ってしまった。

そして、今回、当初の計画から脱線し、小説『fishy』も読むことになった。金原ひとみの小説は初めてだ。エッセーを読まなかったら、小説に手を出すことはなかったと思う。

リアルな会話『fishy』by 金原ひとみ

2020年9月発行の小説。出版作家志望のライター美玖、共働きで女性誌の編集をつづける弓子、インテリアデザイナーのユリのそれぞれの物語

あらすじ(ネタバれなし)

この小説では、実玖、弓子、ユリの順番で、それぞれが一人称の視点で語られる。実玖は20代後半、独身のライター志望、弓子は30代後半の既婚、子供二人の4人暮らし、ユリはアラサーのインテリアデザイナーだが、私生活は謎。

この3人は友人というよりは飲み仲間という形で、不定期にコリドー街で飲む。そのたびに、それぞれが抱える問題が少しづつ変化していく。独身の実玖は不倫関係の悩みと本当にやりたい事を模索、弓子は逆に旦那の浮気と離婚問題、ユリは何に悩んでいるのか分からないが、最後、感情が爆発することになる。

コリドー街:銀座から新橋へ続く歓楽街、いまやナンパの聖地らしい
感想(一部、あらすじの続き)

女性作家の小説は、今年はよく読んでいるが、今までは、男性読者には合わないと思い、あまり読んでこなかった。この小説も女性読者の方が、より共感出来るかもしれない。男性読者としては、薄々、想像していたが、女性同士の飲み会での会話や人間関係の実態に触れられる良い機会になるかもしれない。

この小説で描かれてる世界は非常にリアルに感じる。登場人物が何気なく使っているLINEの使い方(既読やブロック)も参考になる。

この女性3人は、会ったことないのにSNS上で”友人”になり、頻繁に連絡を取り合っているような浅い人間関係のように見える。いつでもブロックして切れる、でも、今は繋がっていることが必要のような。

登場人物・主人公3名の内、美玖と弓子の状況や考えは理解できる部分が多い。一方、ユリについては謎だ。仕事が忙しく、浴びるように酒を飲み、新たな交際相手との関係の変化にイラつく。彼女自身が真実を語らない私生活の現実も、おそらく、暗い影を落としていたと想像できる。

最終的には、非常に暴力的な展開を迎える。この制御不能な様子を見て、彼女が語る私生活の内、本物はどれだったのか想像を巡らすことになる。

この268ページの小説は、その気になれば半日くらいで読める。事実、私も数時間で読み切った。出だしの3人主人公の視点が変わる読ませ方に馴染めれば、問題ないはず。

後半、事態が動き始め、結末では3人の課題の方向性が見えてくるので、読後感も比較的スッキリしている。ユリだけはミステリー。おすすめの小説。

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