(2分くらいで読める)
こんにちは!
毎年、恒例の「本の雑誌」が選ぶ今年のベスト10から、何冊か選び、年末年始、貪り読む季節がやってきました。2020年度ベスト10は、先日、お届けしました(こちら参照)。その中から、第2位の『パリの砂漠、東京の蜃気楼』金原ひとみ氏のエッセーを手始めに取り掛かる。軽く一日で読み切ってしまう、その内容と感想を、今回、お届けします。
小説のようなリアル『パリの砂漠、東京の蜃気楼』by 金原ひとみ
金原ひとみさんは「蛇はピアス」(2004年に芥川賞受賞)は、20歳の頃に書いた小説。蛇とかピアスとかタトゥーとか、少し近寄りがたい内容、かつ、ご本人は不登校、リストカット、舌にピアスとミステリアスな雰囲気あり、今まで、著者の作品は近寄りがたい印象を持っていた。
今回、「本屋大賞」でエッセーがノミネートされていなかったら読まなかったと思う。まずは、小説よりも、作家本人に興味を持ったので読んでみた。
概要
ご本人と夫、子供二人でのパリでの生活と東京に戻ってからの生活をもとにしたエッセーが描かれている。エッセーと聞いていなければ、フィクションと間違えるかもしれない。
友人などの登場人部も、それぞれ問題を抱えており、全24編が進むにつれ、多少の変化もある。本人とその家族は、住む場所は違えど、特に、筆者本人の生活スタイルは変わらない。ただ、その揺れ動く心情のようなものが生々しく描かれている(血生臭くの方が近いかもしれない)
まるで小説の中のような生活が描かれている
感想
- フランスの生活の様子がわかる
エッセイだけに書かれていることは日常生活が多いが、フランス社会の様子がよく分かる。特に、役所など、組織が縦割りのサイロとなっており、担当外のことは誰も把握してないような状況。責任を回避することを意識した言動も多い。
移民の国であり、テロ等も多いこの地域のそれが日常となった様子が描かれている。社会における女性の立場の日本との違いなども興味深い
- LINE
30代の女性ということで、友人との連絡に、LINEが重要な役割を担っていることが分かる。友人との関係から、着信した内容が、どのような内容か概ね予期出来ている点は、リアリティがある。
- 破滅的な生活
原稿の締切に追われながら寝る時間も削り、友人との食事、一人でバーで浴びるほど飲んだり、好きなミュージシャンのライブなどに明け暮れる。このようなハチャメチャな生活は、若くても続けられるものではないと思う。
一方で、きちんと規則正しい、計画的な生活になると考えたくないことを考える時間ができてしまう。それを避けるためにしていることは理解できる。
- 身体を傷つける
ピアスを失敗する描写、リストカット、アルコール依存、身体を徹底的に痛めつけている印象を受ける。健康の大切さを知れば知るほど、リスクは避けたくなるはずだが、著者が求めているのは、もっとギリギリな何か、ギリギリ生きているような緊張感?
- 感想まとめ
読んでいて、この生活は長くはもたないと思うが、このような毎日が、繊細で研ぎ澄まされた小説を書くための必要な環境や状況のような印象も受けた。「本の雑誌」の編集者たちの評価でも、最近の小説はどれも良いとのこと。
「蛇とピアス」か最近の小説を読んでみたいと思わせるきっかけになる緊張感あるエッセーだった。
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