長編も面白い!『死神の浮力』by 伊坂幸太郎

こんにちは!

昨日、伊坂幸太郎氏の『死神の精度』が面白くて、『死神の浮力』を読み始めた。まさか、一日で読み切ることになるとは!?6つの短編からなる『死神の精度』が面白かったので、『死神の浮力』も同じ短編集のつもりで読み始めるがこちらは長編!

想定外だったが、途中でやめられない面白さ。死神のユニークなキャラクターと設定が、独特の世界観を作り上げる!

長編も面白い!『死神の浮力』by 伊坂幸太郎

概要

2005年発表の『死神の精度』の連載による短編集に続き、2016年発表の『死神の浮力』は書き下ろしの長編

あらすじ

主人公は死神の世界の調査部から送り込まれる千葉。彼の仕事は、死神の世界より不慮の死を遂げる候補者の調査。その死は彼の「可」か「見送り」の判断に掛かっている。

死神である彼は、基本、不死身。寝る必要がない。食事は食べるが味がしない。人間の愛情や友情などの感情は十分、理解できていない。真面目である千葉は、他の同僚がサボる中、その候補者に決められた一週間、寄り添う中で判断をする。

人を殺すことに罪悪感を感じない殺人鬼により最愛の娘が殺された夫婦の復讐の物語。死神の千葉は、その夫婦の夫の死を見極めに調査に来ている。ずる賢い殺人鬼が無罪となる中、復讐に燃える両親とさらなる絶望を与えようとする狂人との戦いに、巻き込まれているつもりはないが、重要な役割を演じる千葉。

本当の悪人に対し、裁判による刑罰では満足できない両親は、周到に復讐の準備を進めてきたが、悪の天才でもある真犯人には敵わない。そこに不死身の死神が巻き込まれたことから、天才が追い込まれていく。死神である千葉は、感情がないため、決して、その両親を助けるつもりはない。時には「心ない」妨害すらしてしまう。千葉が頑張るのは、早く仕事を片付けて、人間界で音楽を聴きたいだけだ。

感想

前作の『死神の精度』のテンポが良い短編集が読みやすかったので、読み始めて違和感を感じる。前作は著者も楽しんで書いていることが伝わってくる。一方、本作は、約10年のギャップもあるが、長編ということもあり、じっくりと物語が進む。前作を気に入っていたので、最初は戸惑いを感じるが、後半のクライマックスでは目が離せなくなる。

今作では複数のテーマがある。最愛の子を殺された両親の復讐心と敵討ち。人を傷付けても何も感じない真の悪人の存在。その悪人にはどのような罰が良いのか。悲惨な事件に対する被害者へのマスコミの対応のひどさ。死神がテーマなので死に対してもテーマとなっている。特に、その両親の父親とその父親との親子愛。

いくつかの重いテーマも、暗くならないように軽妙な文章で描かれている。どうせ限りある生命、日々を全力で楽しんで生きようというポジティブなメッセージを受け取れる。

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