『青少年のための小説入門』を読んで

こんにちは!ひろさんかくです。

「本の雑誌」が選ぶ2018年度ベスト10から片っ端に読むシリーズで、第9位の『青少年のための小説入門』久保寺健彦作についてです。チンピラと中学生のコンビが覆面小説家になるという話。奇想天外な話のようですが、作家になるため、数々の名作を二人で読み込み分析したり、長編小説を書くにあたり、人物設定から、おおまかなストーリをプロットとして組み立てたり、まさに「小説入門」そのものです。小説家の生みの苦しみも味わえます。

『青少年のための小説入門』久保寺健彦作について

久保寺氏にとって前作「ハロワ!」以来、7年ぶりの長編小説。419ページ。

チンピラは、ディスレクシアという学習障害があり、読み書きが不自由だが小説家としての発想力がある。中学生(主人公)は、ひょうんなことからこのチンピラの読書の手助け(朗読)をさせられることから、一緒に作家を目指すことになる。実際の執筆は主人公。

以下、ネタバレ含みます

この『小説入門』は、現在の主人公が、当時(1980年代)を思い出す形で、「2人で作家を目指すストーリー(「2人のこと」)」が物語られる。主人公は、4年前「どこにも行けない少年」にて、ひとり再デビューしたばかり。本著の99%以上を占める「2人のこと」が再デビュー後の作品(2作目?)でもある。

覆面作家としてデビューしたのは17年前、デビュー作「ふたりの季節」(「君といれば」「パパは透明人間」の二編)のヒットのみで消えることになる。ある事件で、長編小説「神様がいた頃」は、連載の中断を余儀なくされた。

小説家志望のコンビとして、数々の名作を分析していく(主な登場作品は下の写真にて)。長編小説を作成するにあたり、登場人物の年表などの人物設定、物語の最初から最後までの道筋を大まかなプロットとして設計。執筆が進むにつれ、登場人物が動き出し、プロットも見直していく。まるで、小説入門そのもの。

この2人が小説家になるため、数多くの名作を分析していく過程が興味深く、本好きの読者は話に引き込まれていくことになる。

『青少年のための小説入門』を読んで

最初の数ページを読んだだけで、面白くて、読むのが止められなくなった。読んでいる間の数日間は、早く続きが読みたくて、この本を手放せなかった。

読みながら想像して通り、連載の長編小説のストーリーが迷走し始め、この小説家コンビが作家として生みの苦しみを味わう。同じタイミングで、チンピラのおばあさんの病気の悪化もあり、読んでる方も読むのがだんだん苦しくなってくる。そして、唐突の連載終了、コンビ解消となる。

読後感としては、チンピラ(の人生)が可哀想でしかたがないと思った。読者それぞれ、思い思いの感想や印象があるだろうし、登場人物全員が幸せになる話なんてないだろう。ただ、このチンピラの人生は幸せだったのか、珍しく、小説を読んだ後、考え込んでしまった。私なりの結論は幸せだったと思うことにした。

  1. チンピラは、獄中、主人公からもらった本の朗読のカセットテープを死ぬまで大切に持っていたこと
  2. 長い空白期間を経て、主人公が、書こうとしていたテーマで再デビューし、その本を読んで、2人の約束(インチキじゃないものを書く)を守っていることが分かったこと
  3. 学習障害があるにも関わらず、夢であった小説家デビューできたこと
  4. 主人公の助け(朗読)を借りて、何百冊もの名作を楽しめたこと

著者のプロフィール等を見て、主人公は著者そのもののような印象も持った。

今後の予定

小説は、本著にも出てくる『アルジャーノンに花束を』など、読後、しばらく登場人物が可哀想で、引きずってしまうこともあるから、最近は、小説は読まないか、読んでも軽いものを読んでいる。

本著を読んで、やはり、面白い話や衝撃を受ける話をもっと読みたいと思った。引きずる話にぶつかるかもしれないけど、本著にも出てくるような名作にも、もっと挑戦したい。

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